大塚HD・協和キリン・富士フイルムHDを徹底比較!事業内容・収益の仕組み・強みと今後の展望
大塚ホールディングス、協和キリン、富士フイルムホールディングスは、いずれもヘルスケア分野で強みを持つ日本企業です。しかし、3社のビジネスモデルは大きく異なります。
大塚ホールディングスは医薬品とニュートラシューティカルズを組み合わせた「トータルヘルスケア」、協和キリンは新薬開発に集中する「スペシャリティファーマ」、富士フイルムホールディングスは医療機器やバイオCDMOだけでなく、半導体材料やビジネスイノベーションまで展開する「多角化企業」です。
この記事では、3社の事業内容と収益の仕組みを整理したうえで、それぞれの強み、今後の成長ドライバー、リスクを比較します。ヘルスケア株への投資を考える際に、3社をどのように見分ければよいのかもわかりやすく解説します。
目次
- 1. 大塚ホールディングスは「医薬品+健康」が強み
- 2. 協和キリンは新薬開発に集中するスペシャリティファーマ
- 3. 富士フイルムHDは医療・半導体・ITを持つ多角化企業
- 4. 3社の違いと今後の展望を投資家目線で比較
- まとめ
1. 大塚ホールディングスは「医薬品+健康」が強み
大塚ホールディングスの特徴は、医療用医薬品だけに依存していないことです。医療関連事業に加えて、ポカリスエットやカロリーメイトなどにつながるニュートラシューティカルズ関連事業を展開し、「病気になった後の治療」だけでなく「健康の維持・増進」まで事業領域を広げています。
2025年12月期の売上収益は2兆4,689億円、事業利益は4,461億円でした。売上収益の内訳を見ると、医療関連事業が1兆7,442億円と最大で、ニュートラシューティカルズ関連事業が5,776億円となっています。つまり、大塚HDの収益の中心は医薬品ですが、健康関連商品の事業も大きな柱になっています。
医療関連事業では、精神・神経、がん、自己免疫、希少疾患などを重点領域とし、治療薬だけでなく、診断薬、臨床栄養、医療機器なども手掛けています。一方、ニュートラシューティカルズでは、機能性飲料・食品、サプリメント、健粧品、OTC医薬品などを展開しています。
この組み合わせが大塚HDの大きな強みです。一般的な製薬会社は新薬の研究開発と販売が収益の中心になりますが、大塚HDは「医療」と「日常の健康」の両方に接点を持っています。これによって、医薬品の特許や独占販売期間の終了による売上減少を、他の事業の成長で補う余地があります。
収益の中心となる医薬品では、新薬が成功すれば高い利益率を期待できる一方、特許切れや競合薬の登場によって売上が急減するリスクがあります。そこで大塚HDは、2024~2028年度の第4次中期経営計画で、新薬開発とニュートラシューティカルズの成長を重視しています。
同社は2023年から2028年にかけて、独占販売期間終了による約3,100億円のマイナス影響を吸収し、新薬などの成長によって2028年に売上収益2兆5,000億円を目指しています。また、研究開発費は年間3,000億円以上の水準を継続する方針です。
投資家が大塚HDを見る場合は、「新薬が当たるか」だけでなく、医薬品の成長と健康関連事業の成長を組み合わせて、安定的に企業価値を拡大できるかを見ることが重要です。
2. 協和キリンは新薬開発に集中するスペシャリティファーマ
協和キリンは、3社の中では最も「製薬会社」としての性格が強い企業です。同社は日本発のグローバル・スペシャリティファーマを掲げ、骨・ミネラル、血液がん・難治性血液疾患、希少疾患などに注力しています。
2025年12月期の売上収益は4,968億円、コア営業利益は1,031億円でした。海外売上比率は74%に達しており、日本国内だけではなく、北米など海外市場で稼ぐグローバル企業へと変化しています。
協和キリンの収益モデルは、基本的に「医薬品を研究開発する→承認を取得する→販売する→売上を積み上げる」という製薬会社型です。そのため、研究開発の成功が将来の収益を大きく左右します。
特に重要なのが、抗体医薬品などの高度な創薬技術です。協和キリンは独自の抗体技術を含む複数の創薬技術を活用し、画期的な新薬の創出を目指しています。既存薬の販売だけでなく、新薬候補の開発力が企業価値の源泉になっています。
一方、製薬会社には「特定製品への依存」というリスクがあります。大型製品が成長すれば利益が大きく伸びる反面、競合薬の登場や特許・独占期間の終了によって、売上が大きく落ち込む可能性があります。そのため、次の大型新薬をどれだけ育てられるかが重要です。
協和キリンが今後の成長に向けて注目しているのが、ロカチンリマブなどの新薬候補です。同社は2026年の業績予想で売上収益5,200億円を計画する一方、ロカチンリマブの研究開発費などの増加を見込み、コア営業利益は1,000億円と2025年実績から減少する計画を示しています。
これは一見すると利益面ではマイナスに見えます。しかし投資家の視点では、将来の成長候補に積極的に研究開発費を投入しているとも考えられます。短期的な利益よりも、次の大型製品を育てられるかどうかが協和キリンの中長期的な評価を左右するでしょう。
協和キリンの最大の魅力は、ヒット薬が生まれたときの利益成長力です。一方で、臨床試験の失敗や承認の遅れなど、創薬特有のリスクも3社の中では大きいと考えられます。
3. 富士フイルムHDは医療・半導体・ITを持つ多角化企業
富士フイルムホールディングスは、3社の中で最も事業ポートフォリオが幅広い企業です。現在は「ヘルスケア」「エレクトロニクス」「ビジネスイノベーション」「イメージング」の4領域を展開しています。
2026年3月期の売上高は3兆3,570億円、営業利益は3,502億円、当期純利益は2,767億円でした。2027年3月期については、売上高3兆4,700億円、営業利益3,650億円と、過去最高水準の業績を目指す会社計画を示しています。
富士フイルムHDの最大の特徴は、写真フィルムで培った技術を別の市場へ転用してきたことです。銀塩写真の需要が縮小する中で、化学、材料、画像処理、精密技術などの技術資産を医療、半導体材料、ディスプレイ材料などへ展開してきました。
現在のヘルスケア事業では、MRI・CT、X線、内視鏡などのメディカルシステムに加え、バイオ医薬品の製造を受託するバイオCDMO、ライフサイエンス関連事業などを展開しています。
特に注目したいのがバイオCDMOです。これは製薬会社などから依頼を受け、バイオ医薬品の製造プロセス開発や生産を請け負うビジネスです。自社で新薬を開発して販売するのではなく、「新薬を作る企業を支える」ことで収益を得るため、製薬会社とは異なる収益モデルを持っています。
富士フイルムHDはバイオCDMOに大型投資を続けており、今後は大型設備の稼働率を高めることで収益性を改善することを目指しています。また、半導体材料などのエレクトロニクス分野も成長ドライバーとして位置付けられています。
一方で、バイオCDMOには設備投資負担が大きいという特徴があります。需要を見込んで工場を建設しても、顧客の開発計画が遅れたり、設備の稼働率が上がらなかったりすれば、利益が伸びにくくなる可能性があります。
それでも富士フイルムHDの強みは、一つの事業が不調でも他の事業でカバーできることです。医療機器、バイオCDMO、半導体材料、ビジネスイノベーション、イメージングなどを組み合わせることで、製薬会社よりも事業ポートフォリオの分散が効いています。
4. 3社の違いと今後の展望を投資家目線で比較
3社を比較すると、同じヘルスケア関連企業でも、利益を生み出す仕組みがかなり違うことがわかります。
大塚ホールディングスは「医薬品+健康食品・飲料」型、協和キリンは「新薬開発」型、富士フイルムHDは「多角化+技術転用」型と整理すると理解しやすいでしょう。
大塚HDの強みは、医薬品による高収益性とニュートラシューティカルズによる事業分散です。2025年12月期は医療関連事業の売上収益が1兆7,442億円、ニュートラシューティカルズ関連事業が5,776億円となっており、医療と健康の両輪で成長を狙える構造になっています。
協和キリンは、3社の中で最も「新薬の成功」に企業価値が左右されやすい企業です。研究開発が成功して大型新薬が育てば、海外市場を含めた大きな収益成長が期待できます。その反面、臨床試験や承認などの不確実性も高くなります。
富士フイルムHDは、医薬品そのものだけではなく、医療機器、バイオCDMO、半導体材料、ITなど複数の成長市場にアクセスできることが強みです。2026年3月期には売上高3兆3,570億円、営業利益3,502億円まで成長しており、規模と事業分散の両方を持っています。
投資家目線では、3社の選び方も変わります。新薬開発による大きな成長を狙いたいなら協和キリン、医薬品と健康関連事業を組み合わせたバランスを重視するなら大塚HD、医療に加えて半導体材料やITなど幅広い成長分野への投資を評価するなら富士フイルムHD、という見方ができます。
今後の注目ポイントも異なります。大塚HDでは新薬群とニュートラシューティカルズの成長、協和キリンではロカチンリマブをはじめとする新薬候補の開発進展、富士フイルムHDではバイオCDMOの設備稼働率向上と半導体材料などの成長が重要です。
また、3社とも海外事業の重要性が高まっています。大塚HDは2025年12月期の売上収益のうち北米が1兆1,689億円と最大の市場になっています。協和キリンも2025年の海外売上比率が74%に達しています。富士フイルムHDもグローバルに医療機器や材料、CDMOなどを展開しています。
したがって、国内市場だけを見て3社を評価するのは適切ではありません。為替、米国市場、海外の医療需要、半導体投資など、世界の景気や産業動向も業績に影響します。
さらに注意したいのが「売上高の大きさ=投資先として優れている」わけではないことです。投資判断では、売上成長率だけでなく営業利益率、研究開発費、設備投資、フリーキャッシュフロー、ROIC、株価バリュエーションなどを確認する必要があります。
特に製薬企業では研究開発費が将来の成長投資になります。短期的に利益が減っていても、新薬候補が順調に進んでいれば将来の企業価値が高まる可能性があります。一方、富士フイルムHDのような設備投資型の事業では、投資した設備がどれだけ利益を生み出すようになるかを見ることが重要です。
このように、3社は「ヘルスケア」という共通点こそありますが、投資対象として見るとかなり違います。安定性、成長性、研究開発リスク、事業分散、設備投資負担など、自分が何を重視するかによって評価が変わる3社です。
まとめ
大塚ホールディングス、協和キリン、富士フイルムホールディングスは、いずれもヘルスケア分野で成長を目指していますが、事業構造は大きく異なります。
大塚HDは、医療用医薬品を収益の柱としながら、機能性飲料・食品などのニュートラシューティカルズを組み合わせています。医療と健康の両方に事業を広げている点が大きな強みです。
協和キリンは、新薬開発を中心とするスペシャリティファーマです。大型新薬が成功した場合の成長余地が大きい一方、臨床試験や承認など、創薬特有のリスクを抱えています。
富士フイルムHDは、医療機器やバイオCDMOだけでなく、半導体材料、ビジネスイノベーション、イメージングなど幅広い事業を持っています。写真フィルムで培った技術を異なる市場へ展開してきた「技術転用力」が最大の特徴です。
投資家が3社を比較するときは、単純な株価や売上高だけで判断するのではなく、「何で稼いでいるのか」「次の成長ドライバーは何か」「どんなリスクを抱えているのか」を確認することが重要です。
特に今後は、大塚HDの新薬と健康関連事業、協和キリンの新薬パイプライン、富士フイルムHDのバイオCDMO・半導体材料などの成長が、それぞれの企業価値を左右するポイントになりそうです。
同じヘルスケア関連株でも、3社の投資テーマはまったく同じではありません。「新薬の成長力」「医療と健康の安定性」「多角化による成長力」のどれを重視するかを決めてから企業を比較すると、自分に合った投資先を考えやすくなるでしょう。
参考資料:大塚ホールディングスの2025年実績・中期経営計画 ([otsuka.com][1]) / 協和キリンの2025年実績・2026年計画・中長期戦略 ([ir.kyowakirin.com][2]) / 富士フイルムホールディングスの2026年3月期実績・事業領域・成長戦略 ([holdings.fujifilm.com][3]) [1]: https://www.otsuka.com/jp/ir/individual/ataglance.html?utm_source=chatgpt.com "大塚グループ At a Glance|個人投資家の皆さまへ|株主・投資家の皆さまへ|大塚ホールディングス株式会社" [2]: https://ir.kyowakirin.com/ja/library/earnings/earnings0/main/01114/teaserItems1/00/linkList/0/link/summary_2025_q4_ja.pdf?utm_source=chatgpt.com "2025年12月期 決算短信〔IFRS〕(連結)" [3]: https://holdings.fujifilm.com/en/news/list/2127?utm_source=chatgpt.com "Fujifilm Announces Financial Results for the Fiscal Year Ended March 31, 2026 | FUJIFILM Holdings Corporation"
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